介護施設の看護師ってやりがいあるの?
実際の業務内容って?
病院より楽だと聞くけど、転職に踏み切るには情報が足りない。
そんなあなたにこそお読みいただきたいです。
施設看護師の役割とやりがいについて。
4年近く有料老人ホームで勤務している私の思いと、
同僚ナースから貰った意見を元に記事を作成しました。
『その人なりの健康と楽しみを維持できるよう、日常生活を医療面から支える』
『急変時の対応や受診までのつなぎ役』
『その人らしく生ききるため、中長期的に寄り添う』
私は急性期病院での勤務が長かったので、施設に転職した当初はちょっとしたカルチャーショックがありました。
今ではすっかり施設看護にやりがいを感じ、楽しくお仕事しています。
私の経験と、一般的な高齢者施設の情報を元に施設看護についてお伝えしますね。
具体的なエピソードも交えて記事にしました。
楽しくお読みいただけますように!
・施設看護師の役割、業務内容
・具体的なやりがい(エピソードあり!)
・介護施設と病院の違い、特色
私が勤める有料老人ホームを簡単に説明します。
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施設看護師の役割とやりがい
はじめは「やりがい」が見えにくい
病院から転職した頃の私は、「施設看護師のやりがい」が見えず、モヤモヤしていました。
体力的には確かにラク。
緊迫した場面も少なくて、医療者らしい仕事が少ない。
やりがいって何だろう?
介護士さんの免許では出来ないことを充てがわれてるだけじゃない?
2023年現在、施設看護を始めて約4年が経過。
「それぞれの入居者さんに必要な看護が見えるには、
中長期的な関わりが必要」だと気づきました。
つまり一般的な病院のように、
「必要な看護は○○」「やりがいは○○」とすぐには答えが出なくて当然なんです。
施設看護師のやりがい|エピソード
『その人なりの健康と楽しみを維持できるよう、日常生活を医療面から支える』
『急変時の対応や受診までのつなぎ役』
『有意義な最期に向けて中長期的に寄り添う』
上記はこの記事の冒頭でも触れた、施設看護師の大きな役割かつ、やりがいです。
文言だけではピンと来ないかも知れません。
いくつかエピソードを挙げますね。
やりがいエピソード①本物の果汁を使用したアイスマッサージ
病院だと生モノの差し入れをお断りすることも。
生モノを吸い込ませたスポンジブラシを保管するのもNG。
施設だからこそ出来ました!
せっかくの季節の果物ですから。
食べられなくても味わわせてあげたい。
いつもの口腔ケアジェルより、きっといいお味です!
やりがいエピソード②認知症初期からご逝去まで
当初は苦しむばかりのご本人をどうにか安楽に。
精神的・身体的支援や薬物療法など。
変わりゆく姿に衝撃を受けるご家族に、現状やこれからを説明。
双方が穏やかに過ごしていただけるよう、医療面から支えます。
やりがいエピソード③変化を把握し医療へつなぐ
住居型居室の入居者さんは自立されている方も多いです。
しかしみなさんご高齢。
少しのできごとをきっかけに医療的介入が必要になります。
入居者さんの情報は、日頃から多職種で共有しています。
いつもと違う条件がある場合は特に気を配ります。
体調不良に繋がりそうなことは、まず看護師に報告します!
やりがい エピソード④老老介護のご夫婦に生活と健康を委ねてもらう
「身内や世間に迷惑をかけずに生涯を終えたい」
と入居された、住居型居室のご夫婦。
当初はどちらかが配偶者の介護をされていることが多いです。
・吸入薬をちゃんと吸えてない
・内服薬の飲み間違いが増えている
・受診時に現状の説明が出来ない
・水分摂取不足
・場合によっては急いで医療機関へ!
⇨医療的介入にて体調を管理
介護する側の入居者さんも、年齢から来る衰えが顕著となって行きます。
すごく無理して更衣の介助や食事の準備をしてたり。
看護師とともに介入し、生活面も医療面も改善にむけて動きます!
施設看護師の役割、業務
介護施設では、日常生活のお世話の多くを介護士さんが担います。
施設看護師の役割は、「医療処置」「健康管理」
「日常生活の可否判断(例:入浴していいか、食事をしていいか)」が主となります
介護施設での看護業務 |
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健康管理 |
入浴、食事等の可否判断 |
内服管理 |
医療処置:経管栄養、点滴、インスリン注射、酸素投与、浣腸などの排泄処置、創傷処置など |
急変時対応:医療処置、医師・家族へ連絡、他職種への指示 |
多職種連携の中心(橋渡し役) |
支援方法の検討:(例)入浴方法を介護士さんと協働し決定 |
緊急受診の判断や付添い※施設によっては介護士が付き添い |
病院看護と施設看護の違い
病院での看護業務は良くも悪くも「医療優先」です。
患者さんやご家族の都合や価値観よりも「必要な処置」が優先されるのは多々あることです。
食事中でも急に検査に呼ばれたり。深く入眠していても頻回に創部チェックをしたり。
飲みにくい薬でも毎度毎度ガマンして飲んで貰うなど。
一方、介護施設では
「日常生活を医療面から支える」ことが大きな役割です。
いわば「日常生活優先」。
内服や注入、創処置、VS測定など医療に直結する業務は、
「食事」「睡眠」「入浴」「アクティビティ」「オムツ交換」の合間に行うのが原則です。
日常生活支援の多くを担う介護士さんとの協働が、入居者さんの生活を有意義なものにできるかのカギとなります。
日常の施設看護:健康管理
入居者さん各々の既往歴、ふだんのVS ・顔色・話し方・歩容・食事や排泄、睡眠などを把握。
もちろん全ては記憶できないので、カルテへの記録や検診や受診結果の整理などを行います。
介護士さん始めとする多職種と情報を共有し、変化がないか観察が必要です。
こういった情報を元に、排便処置や内服管理、
ルーティンの医療処置などを行っています。
何か変化があればすぐに介入し、
看護師の判断で対応したり、医師の判断を仰ぎます。
急変時の施設看護
入居者さんはご高齢なので、急変はどなたでも起こり得ます。
転倒などの外傷、既往疾患の悪化、新たな疾患の症状が出るなど、様々です。
「急変」なのか「ありがちな体調不良」なのか、
判断が難しいことは多々あります。
医師に判断を仰ぐのか、否か。
※施設によっては往診医であったり、併設クリニックはなく系列病院で診療する医師であったり様々
病院同様、夜間や休日に医師に連絡するようなことなのか、
ご家族は本人の意思はどうなのか。
その場で観察・判断すべきことは多いです。
看護師として経験とスキルが問われる場面です。
施設ならではの対応を身につけます!
病院では急変時、心電図モニターを用いることが多いです。
介護施設では配備されていないことがほとんど。
胸痛などは既往や症状、VSや前後の言動・表情などから医師への報告や受診の判断につなげます。
疾患名を予測することもある程度は必要ですが、
大事なのは「施設として、入居者さんをどう支援するか」。
ターミナル期の施設看護
看取りを担わない施設
看取りを担わないタイプの施設では、最期が近くなれば病院への受診や入院へつなげる関わりとなります。
生命の危機が予測される急変もしかりです。
看取りを担う施設
多くの方が入居・利用している施設を「終の棲家」と捉えています。
延命処置を望まず、「できるだけ穏やかに、少しでも楽しみを持ちつつここで最期を迎えたい。」
そう希望されることがほとんどです。
楽しみのための経口摂取は何にしよう?
アクティビティとしての軽いリハビリは?
医療的観点から「快の刺激」を提供しよう!
若い頃や家族さんが面会に来られた時の写真、
施設行事で撮った写真…
思い出の品を居室に飾ろうかな。
すごくお花がお好きです。
施設の庭に咲いたお花をベッドサイドに生けてみます。
病院だと制限がかかることも、施設だと可能です。
施設のターミナル期看護は、「できるだけ不快を取り除くこと」「快の刺激を提供すること」が主になります。
介護施設と病院は全く別の役割
施設での医療サービス
「病院は治療(医業)を行う場所」「施設は生活をする場所」
よく言われる違いです。
病院によって提供される医療が様々であるように、施設でも様々な違いがあります。
一つの例として参考にして下さい。
介護施設の役割
介護施設は「自宅と病院の間」のような存在です。
自宅では、医療や介護よりも個人の価値観やペースを優先します。
・ 病院では、個人の生活習慣や価値観、また保清や食事よりも「急ぎの処置」「急ぎの検査」などで医療上の都合を優先させることもしばしば。
・施設では食事、睡眠、入浴、更衣やアクティビティなどの日常生活のルーティンがベースにあり、その合間に医療的なサービスを提供することが多いです。
以下に各施設の特色を記しました。
いわゆる「老健」:介護老人保健施設
在宅復帰を目指す場です。
基本的には看取りはありません。
※要介護認定がある人のみ利用可
要支援1.2の人は利用できません。
引用元:厚生労働省ホームページ
介護老人保健施設は、在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、入所者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、リハビリテーションや必要な医療、介護などを提供します。
老健看護師の記事です↓※サイト内別記事にリンクします
いわゆる「特養」:特別養護老人ホーム
介護度、医療的依存度が高い方が過ごされます。
看取りを行います。
※要介護3以上の方が利用できます。
引用元:厚生労働省ホームページ
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、入所者が可能な限り在宅復帰できることを念頭に、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などを提供します。・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、入所者の意思や人格を尊重し、常に入所者の立場に立ってサービスを提供することとされています。
特養のくわしい解説です↓ ※サイト内の別記事にリンクします
いわゆる「有料老人ホーム」:介護付き・住宅型・健康型など
自立している方から要介護5の方まで、医療的依存度が高い方から看取りまで、
幅広くサービスを提供します。
施設ごとの特色が強く、サービス内容の独自性が高いです。
引用元:厚生労働省ホームページ
施設入居者生活介護は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームなどが、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを提供します。
有料老人ホームのくわしい解説です⇩ ※サイト内の別記事にリンクします
介護施設の医療設備・生活設備・福祉用具
医療設備の違い
施設の医療設備が少ないんです。
総合病院から施設に転職したナースはみんなびっくりします。
看護学生だった頃に施設実習で経験はしていても、です。
私もびっくりしましたよ!
病院だと「なくてはならない」と思っていた、中央配管や心電図モニターはありません。
いわゆる「状態が悪い」人にもモニター監視なしです。
ふだんの顔色や言動・VS・食事や排泄、その時点での症状で予測や判断をします。
始めはどう判断するのか分からず不安でした。
でも「その施設ならではの判断の基準」が
だんだん見えて来ます。
怖がらなくて大丈夫ですよ〜!
介護施設の医療設備 |
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中央配管がない(HOT、携帯酸素、ポータブル吸引を使用する ) |
各種モニタリング機器がない(十二誘導もなし。併設クリニックに装備あり)※併設されていないところも多い |
検査機器なし(レントゲンは併設クリニックに) |
施設内ですぐに出来る検査(簡易血糖測定、テステープ) |
施設によっては人口呼吸器使用可 ※施設の設備ではなく利用者がレンタルする |
生活設備の違い
医業を行うことが目的である病院とは違い、
施設では「食事」「入浴」「アクティビティ」「睡眠」などの生活を送ることを支援します。
よって設備面でも、医療設備よりも生活設備の充実に重きが置かれています。
生活設備 |
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食事は基本的に「食堂」「ダイニング」で摂取。※施設では「喫食」と言われる |
基本的に個室。トイレ、洗面所は本人専用。※施設のタイプにもよる |
個室であるため、就寝時に電灯やTV・ラジオを点けたままも可能。 |
フロアはカーペット敷きが多い※音が響かず、パネル式のため汚染時に交換可 |
浴室は大浴場、個浴(一人用の浴槽)、中間浴(シャワーチェアのまま浴槽へ)、機械浴(エレベートバス)など |
介護施設の福祉用具
介護施設の福祉用具は、病院より遥かに充実しています。
特に急性期病院では、便利な用具を使うことは少ないです。
看護師がひたすら体力を削って行うケアも、便利な福祉用具があれば安全かつムダを減らせます。
車椅子や立ち上がり補助具
車椅子:
フットレストを外せ、可動式アームレストのタイプがほぼデフォルトです。
抱え挙げての移乗介助ではなく、下肢の皮膚剥離などの事故を予防しやすくなります。
立ち上がり補助具:
・L字柵タイプのもの
・床から天井までのつっかえ棒タイプのもの
お手洗いなど、様々な立ち上がりが必要な場所に使用できます。
オムツ類
介護施設では、「なるべく長時間交換や確認をしなくて良い」高性能なオムツ類を使用していることが多いです。
療養病床などでは既に取り入れている病院もありますね。
介護施設のオムツ類の特徴
・大量の尿を吸収できる
・皮膚に優しく、かぶれにくい
・体格や動くにしっかり沿う形状
・短時間での交換が不要なので、睡眠や活動の妨げにならない
※高価にはなるが、交換回数が少ないのでメリットが大きい
介護施設の看護師:まとめ
病院と施設の違い
病院は治療や検査などの「医業」を行う場所。
施設は生活の場所。
それぞれの目的に応じた設備を有し、サービスを提供します。
つまり、施設での医療サービスは
「生活を支援するための医療」です。
施設看護師の役割とやりがい
施設看護師の役割
日常生活を医療面から支える:
健康管理、医療処置、入浴や食事の可否判断、生活支援方法の検討、急変時対応など。
施設看護師のやりがい
施設看護のやりがいは、生活を支えるための医療を提供できること。
生命維持を第一とする病院看護とは、違ったやりがいがあるんです。
入居者さんにガマンを強いることが少なく、
喜んで貰える場面が多いのです!
『その人なりの健康と楽しみを維持できるよう、日常生活を医療面から支える』
『急変時の対応や受診までのつなぎ役』
『有意義な最期に向けて中長期的に寄り添う』
最後までお読みいただきありがとうございます。
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